はじめまして。日本理美容福祉協会 和歌山南紀センター代表の石川です。

美容室で、アシスタントとして働いていた頃、毎回タクシーで来てくださるお客様がいらっしゃいました。
いつも、長い時間をかけてカットとカラーをされて、帰りは決まって車でご自宅までお送りするのが、アシスタントの役目でした。
お送りしたご自宅は、驚くほどの急な坂をあがった上にあり、一度私の休みの日にお送りした後輩は、車でその坂を上がれなかったと。
「よく、この坂道上がれたものだ…」杖をつかれていて、玄関先までついて行かないと安心できない状態の方でした。

高齢のお客様が多かった美容室。この方たち、この先歩くことが難しくなったら、どうされるんだろう?
恐らくそう遠くない未来、お越し頂くことは出来なくなる。漠然と訪問美容の必要性、不可欠性は分かっていました。
具体的に何が、必要なのか?どう始めればいいのか?自分は何が分かってないのか?
迷っているより、行ってしまえ!で早速、受講しました。
自分の進む方向性の選択肢が増えました。元々、お若い方よりは、おじいちゃん、おばあちゃんとお話する方が特異なタイプ。
向いているかもしれない!

和歌山南紀センターとして、仕事を始めたばかりの頃、まだまだ「本当に良かったんだろうか?」不安ばかりの日々。
そんなとき、お電話くださったお客様。白髪のきれいな、とても美しい女性でした。見た目のお元気さとは裏腹にご病気を抱えておられました。
「自分で美容室に行けなくて。一度近くの理容室で切ってもらったんだけど、短く切られて、ずっと帽子をかぶって過ごしてたの。良かったあ」
本当に嬉しそうにおっしゃられたその言葉が、私がこの仕事を始めた意味を肯定して後押ししてくれたような気がして、忘れられない言葉となりました。
そのお客様は、必ず毎月1回お呼び頂きましたが、ある日「明日から、遠くの病院へ行かなくちゃならないの。だからしばらく、切れないから。帰ったらまた頼むね」
そうおっしゃられてから、数日後お亡くなりになられました。
多分ご本人も、もちろん私もそんなにすぐにお別れが来るとは、予想していませんでした。
自分がこの仕事を始めた動機とお客様のお言葉が重なり、改めて自分の方向性を力づけてくれたお客様でした。
ありがとうございました。

高齢であることや病気であること、思うところに行けないからと、今までの生活の質を変えることのないように。
髪を整えたい、きれいにしたい、そんな当たり前をあきらめることのないように。
そんな思いで日々走っております。